ICHIGOOJI スペシャル企画
~いちご王子にお会いしてきました~
坂井市春江町に「王⼦」がいると聞き、さっそく訪ねてきました。
気になる王⼦はとてもお若くて、でもしっかりとした⽬標と、それに向かって前進する⾏動⼒も兼ね備えた、まさに国を率いる聡明な王⼦でした。
こんな⽢いマスクで、美味しいいちご作っちゃうなんて!
今シーズンで 3 期⽬を迎えた「ICHIGOOJI株式会社」
代表取締役の池⽥天瑠さんは⼤学卒業と同時に農業の道に。
なぜ春江町でいちご農家になったのか。
これまでのこと、これからのこと、いろいろお話しを伺いました。
稲作農家の叔⽗にあこがれ、福井へ
池田さんの出身は兵庫県。
福井で稲作農家をしていた叔父が働く姿をみて、
なんかかっこいいな、と農業に憧れを抱くようになります。
大学3回生のときには、叔父の口利きで田中農園(坂井市)にて農業初体験。
どんな感じかなーとアルバイトで始めた農業ですが
叔父の背中に見えた充実感、やりがいにすこし近づけたような感覚を覚えたことと、若くして就農することはビジネスチャンスだ!
と、内定が決まっていた会社を辞退し、農家になることを決意。
それには叔父も友人たちも「農業はそんな甘いもんじゃない」と大反対。
両親だけは「好きなようにしたらいいよ」と背中を押してくれたそうです。
就農ってむずかしい・・・
稲作農家がしたいと⼤学卒業前に準備を進めていましたが、これがなかなか難しい。
県外出⾝者で、しかも若い。
福井に親戚がいようとも
「どこの⾺の⾻かわからんもんに⼟地は貸せん」
「若いし、ちゃんと続けていけるのか?」と難航。
そこへ
「いちごのリース事業やってるから応募してみない?」
と旧 JA 春江の⽅から声をかけられたそうです。
「これがなかったら、今の状況とはまったく変わっていたと思います」
というほど、池⽥さんの運命を⼤きく左右するできごとでした。
その後、審査を経て事業に参加できることになり、京都のいちご農園での研修後、
2020 年に、ようやく春江で「ICHIGOOJI」始動。
その頃には、両親、同級⽣、後輩らが兵庫から福井へ移住し、5 ⼈で歩みを進めていくことになりました。
2021 年には市の移住サポーターにも任命され、現在も東京や⼤阪で講演を通じ、「移住×農業」の魅⼒を発信しています。
農園っぽくない農園を⽬指そう!
写真をご覧いただくとお分かりかと思いますが
「ICHIGOOJI」のハウス内はとてもきれい!
地面に土がない!
おしゃれな音楽がかかっている!
「稲作だったら、こんなことはできなかったと思う」と、
これまでの農園のイメージを払拭し、若いからこそできる「農園っぽくない農園」を目指して、さまざまな取り組みを行なっています。
(本当は汗水流して自然と向き合う泥臭い作業もたくさんあるのですが、それは影の努力として・・・)
「農園っぽくない農園 その1 清潔感と爽やかさ」
いちご摘み取り体験も行なっているため、誰もが気軽に訪れることのできる、ICHIGOOJI。
清潔感と爽やかさが特徴です。
ハウス内を土足厳禁にすることで、常に清潔が保たれ病害虫防止にもなり、摘み取り体験に来られた方も心地よく過ごしていただけます。
また、出荷先の方に「こういう環境で作っています」と伝えることで安心してもらえるそうです。
「農園っぽくない農園 その2 空間を楽しむ」
摘み取り体験にお越しいただく方には空間も楽しんでほしいと、音楽をかけたり、ときには「農家DJイベント」なども開催。
若い世代に農園を知ってもらうきっかけ作りにも取り組んでいます。
「農園っぽくない農園 その3 オリジナルユニフォーム」
スタッフがおそろいのユニフォームを着用するのも、これまでの農業にはあまりないスタイル。
いつか、ICHIGOOJIオリジナルのパーカーやキャップと摘み取り体験がセットになった“会員制”にも挑戦したいとのこと。
現在はスタッフ限定オリジナルトレーナー。
デジタル化でさらに美味しく
太平洋側に比べると、地温、日照時間など
いちご栽培にはあまり向かない環境の福井。
そこで取り入れているのが二酸化炭素発生機や環境制御システムの導入。
二酸化炭素は植物にとっては大事な栄養源。
太陽光と合わさることで光合成しやすくなり、いちごがよく育つようになります。
また、いちごにとって最適なのは春の気候。
環境制御システムで温度や湿度、CO2を自動管理しますが、ハウスの開閉はあえて手動。
冬はハウス内を暖かく、初夏に近づいてきたら暑くなりすぎないよう調整しています。
水分や栄養も自動で管理されており、ハウス内はいちごにとって、いつも快適な環境が保たれています。
手作業も欠かせません
システム化しているとはいえ、余計な葉を取ったり、摘果したりといった手作業がいちご栽培には欠かせません。
どんどん成長していくので毎日空いた時間はプチプチと間引き。
通常の2倍の手間がかかっているそうです。
手間をかけた分、栄養も十分に行き渡り、病気になりにくく大きな実をつけてくれます。
そうすると、農薬の回数も減らせるので生産者にも消費する私たちにもやさしくて美味しいいちごが出来上がる。
というわけで、根気がいる作業ですが、人の手による作業はとても大事なのです。
ある程度、葉を残すことで太陽の光を取り込みやすくしている。
花の数をすくなくして、一粒を大きく育てるのはICHIGOOJI流。
ブゥ〜ンと飛び回っている「マルハナバチ」
黒くて大きいけれど、凶暴性はありません。
ちょっと食いしん坊で受粉しすぎてしまうことがあるので、そんなときはエサとなる花粉をあらかじめ与えてから飛ぶ量を調整しているそうです。
ちょうどいい塩梅で飛んでくれると、形もきれいないちごが育ちます。
マルハナバチの巣と、受粉しすぎたいちご。どんな形でも甘くておいしい!
超ビッグサイズの『イチゴザウルス』の誕生
福井県内のスーパーや道の駅でみかけたこと、ありませんか?
一粒600円ほどの高級いちごを。
肥料管理を切り替えて特別栽培する「イチゴザウルス」は、手のひらほどの超ビッグサイズ。
一粒60g以上に育った「べにほっぺ」をそう呼んでいます。
(60g = 通常のいちご3〜4個分)
そこで、ごつごつした見た目と福井の恐竜をイメージして『イチゴザウルス』と名付けたそうです。
インパクトがあって覚えやすいですね!
県外の方へのおみやげにも喜ばれそうです。
「イチゴザウルス」は毎年1月下旬から2月下旬の約1ヶ月間のみ。
自分へのごほうびに独り占めするもよし、バレンタインデーやホワイトデーの贈り物にするもよし。
ぜひ一度は食べてみたい、贅沢いちごです。
1株に3〜5個しか実らせない大きなイチゴザウルス。(通常は7〜10個)
いちご摘み取り体験は6月下旬まで
さて、まだ間に合う、いちご摘み取り体験。
いちご王子とスタッフの皆さんが丹精込めて作ったいちごを45分間食べ放題!
ヘタのところまでしっかり赤く色づいているものが熟しているサイン。
じっくり見極めて最高の一粒をみつけてくださいね。
やっぱり採れたてがいちばん美味。
パックに入ったいちごも美味しいけれど、なにかが違う!
摘みたてを味わう、これは何事にも変え難いおいしい体験です。
さいごに
今後、ICHIGOOJI株式会社は作付面積を増やし、これまで以上にたくさんの人を幸せにする農園を目指していくそうです。
「僕は今、大先輩である叔父世代とその後継者となる次世代のちょうどあいだの年代。なので “農業×農業以外”を掛け合わせたらどんなことが起こるだろう、とか、農業の新しい方向性に挑戦してみるとか、これから自分が体験することを次の世代につなげていきたいと思っています」
そう語る目の奥には、「農業がやりたい!」という純粋な気持ちを熱源に、これからの日本の農業の未来を支える大切な種が芽吹いているのを感じました。
Photo gallery
文・写真:吉田 知奈